先日『ハイヤー乗務員に英語力は必要か?』という記事を書きましたが、その執筆中に思い出した私の体験談です。
海外からのお客様が唐突に発した
「本栖湖は渋滞知らずで良いねぇ!」
という言葉の意味とは!?
超名門!川奈ホテルゴルフコース
ハイヤー乗務員の仕事でよくある仕事にゴルフ場送迎があります。
ハイヤーをご利用になるお客様がプレイされるゴルフ場はいわゆる『名門』と呼ばれるゴルフ場が多いのですが、この時はその中でも名門中の名門、川奈ホテルゴルフコースへの送迎でした。
川奈ホテルゴルフコースは伊豆半島の伊東市に位置し、都内から日帰りでプレイするには少し厳しい場所です。
今回は海外からいらしたVIPのお客様を、プレイ前日に川奈ホテルへお送りして、翌日のプレイ後に都内のホテルまでお届けするという仕事内容。
我々乗務員も川奈ホテルに宿泊…とは流石にいきませんが、近隣のビジネスホテルでの一泊付き。時期も陽気の気持ち良いゴールデンウィークと、ちょっとした旅行気分を味わえる美味しい仕事でした。
復路に待ち受ける心配事を除けば…
大渋滞不可避
通常のゴルフ仕事というのは、早朝にお客様をゴルフ場へお送りしたらプレイ終了までゴルフ場内で待機になります。
しかし今回は前日にお送りしてるので、お迎えはプレイ終了までにゴルフ場へ行けば良いのでノンビリできます。
ビジネスホテルをゆっくりチェックアウトして、伊東周辺をドライブしながら伊東マリンタウン(大規模な道の駅)で海鮮に舌鼓を打ち、昼過ぎに川奈ホテルへ到着。
コースアウトされたお客様のキャディバッグを受け取り、出発までの間に道路状況を調べていると…予想通りとは言え憂鬱な気分になってきました。
ゴルフのハイシーズンは観光シーズンでもある訳で、午後から夕方頃には都内方面へ帰宅する車で大渋滞が発生するのです。
素直に海沿いの真鶴道路から小田原厚木道路経由で東名を使い都内へ向かうと、渋滞無しなら2時間程度の道のりですが、ハイシーズンだと2倍の4時間も覚悟した方が良いとの噂も…
なので事前に渋滞回避ルートを検討しておきます。
伊豆スカイラインから芦ノ湖スカイラインを経由して御殿場を目指す『山越え』ルートもあるのですが、今回は熱海駅経由とのオーダーなのでイマイチ。
そもそもお乗せするのが海外VIPのお客様なので、山道のワインディングロードは避けたいところです。
事前に先輩のベテラン乗務員さんからも、多少は県道740号が使えるかも知れないが、結局は渋滞覚悟で突っ込むしかないとの役に立たないありがたいアドバイスを頂きました…
そうこうしているうちにお客様がお見えになり、いよいよ出発の時がやってきました。
突然の本栖湖!?
熱海駅までは比較的順調に進み、先ずはホスト側の日本人役員様を降ろします。予想通りそこから道路は徐々に混雑し始め、やがて激しい渋滞となりました。
調べておいた県道を使うも焼け石に水で、根府川周辺に辿り着いた頃には日も暮れかけ、連なるブレーキランプの赤色が目に染みます。
ほとんど動かない車列の横を軽快にすり抜けて行くバイクを恨めしい気持ちで眺めていると、突然後席からお客様の笑い声が聞こえてきました。
「MOTOSUKO’s traffic condition is very fine! HAHAHA!」(私の低いヒアリング能力による推測)
えっ!?モトスコ?本栖湖は渋滞してないって言ってる?何故に本栖湖?
サム夫「MOTOSUKO?」
お客様「Right! anytime smooth!」(同上)
本栖湖の方から行った方が良かったんじゃない?って言ってるのか?…でも流石にそれは迂回し過ぎだし…そもそも外人さんがそんな道を知ってるか?
う〜ん…分からんけど笑ってるし、取り敢えず相槌うっとけ!
サム夫「Yeah! That’s sounds good.」
するとお客様は満足した様に見え、会話もそこで一旦終了。お客様は鼻歌交じりでスマホを操作していて、御機嫌は悪くない様子です。
しかし相変わらず渋滞は続いており運転に割く注意力が少なくて済むせいか、私の頭の中は『何故に本栖湖?』という疑問が渦を巻き、言葉が分からないが故に何か失礼があったのでは無いかという不安で一杯でした。
本栖湖の正体
ダラダラと続いた渋滞も早川インターチェンジに差し掛かる頃には流れ始め、私の意識も運転に集中し出したので、いつしか本栖湖の謎は頭から離れていました。
まだ東名の渋滞が残っているとは言え、そこは時間も読み易いですし、いざとなれば高速の乗り直しという手もありますので、だいぶ心に余裕も生まれてきたのです。
その心の余裕からか、私の車を鮮やかに抜き去る1台のバイクを見た時、突然閃いたのです!
バイクは英語でモーターサイクル(motorcycle)と言います………
モーターサイクル………
モーターサイコー………
モタースァコー………
モトァスコー………
モトスコ!
そうです!本栖湖では無くモーターサイクル!お客様は渋滞をすり抜けるバイクを見て
「バイクは渋滞知らずで良いねぇ」
と仰っていたのでした!いや〜この事に気付いた瞬間はスッキリしました!
んな訳あるか〜いっ!
と思われた方もいるかも知れませんが、日本人に馴染みのあるカタカナ発音とネイティブの方の発音って結構違うんですよ。
マイケル(Michael)もどちらかと言えばマイコーの方が近いですし、マクドナルド(McDonald)もマケダーノと発音した方がネイティブの方には通じます。
まぁスッキリ解決したとは言え会話からは30分も経過しており、お客様も寝息を立てていらしたので今更どうこう言えるタイミングではなく、自分一人で納得していただけなんですがね…
斯くしてお客様を都内のホテルへお届け出来たのは20時近く、川奈ホテル出発から3時間半ほどの道のりでした。
長時間のドライブでしたが、お客様は気分を害されるどころか何故か私を気に入って頂けた様で、後日会社を通してお褒めの言葉を頂きました。
本物の本栖湖の渋滞情報
ちなみに本物(?)の本栖湖は渋滞知らずかと言いますと…そんな事はありません。
例年4月下旬から5月下旬まで、富士芝桜まつりというイベントが開催されており、土日祝日は10Km以上の渋滞になるそうです。
つまりこのゴルフ仕事の時も、本栖湖方面の道路状況は全然クリアじゃ無かった訳ですね〜
ハイシーズンの観光地へは、自動車よりも『モトスコ(motorcycle)』がオススメです!というお話しでした。
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