国民的男性アイドルKさんは、顔だけじゃなく心もイケメンだった件

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ハイヤーよもやま話

名前を出せば(出しませんが)、日本国民の9割は知っているであろう男性アイドルを乗せた時の思い出話しです。

【注意】この話しは、とあるハイヤー乗務員の実体験を基に構成していますが、守秘義務を守る為にフェイクを入れています。あくまでもフィクションとしてお楽しみ下さい。

同姓同名?

「サム夫さん、明日だけど名古屋の日帰り行ける?」

まだ行けるとも行けないとも答えていないのに、私の名前が記載された運行指示書を渡しながら配車デスクが声をかけてきました。

運行指示書のお客様欄には、誰もが知る国民的男性アイドルKさんの名前が。

「へぇ!Kさんですか。名古屋でコンサートでもやるんですか?」

どうせ同姓同名だと思って、戯けた返しをしたつもりが、デスクから返ってきた言葉は

「うん、午前中に現地入りしてリハーサルするみたい。本番が終わるまで待機して、終わったら自宅まで。」

なんとビンゴ!ご本人でした!

もうベテランのデスクは芸能人の仕事も珍しくはないのでしょう。いつもの仕事と同じ感じで運行指示書を渡して来ますが、当時の私はまだ新人に毛の生えた程度のヒヨッコ乗務員。

えっ!?マジ?あのKを乗せるの?

と半信半疑のまま、超大物芸能人を乗せた、日帰り弾丸ツアーは幕を開けたのです。

マネージャーさんからのお願い

そんなこんなで当日早朝。先ずは都内某所でマネージャーさんをピックアップ。ハキハキとした好青年といった方です。

今日の予定時間やルートなどの確認を一通り終え、Kさんのご自宅へお迎えに向かう最中、マネージャーさんがバツの悪そうな声で聞いてきました。

「あの…ハイヤーって高速だと何キロくらい出して貰えるんでしょうかね…?」

聞けばKさんは運転が好きな方で、しかも結構な飛ばし屋らしいのです。マネージャーさんが運転する車でも『遅い』とイライラし出す事も日常茶飯事だそうで…要は『飛ばして欲しい』って事なんですね。

とは言え法定速度以上を出します!とは大っぴらに言えませんし、何よりハイヤー車両には走行履歴を記録するデジタルタコメーターが付いてるので、こちらも無茶はできません。

「かしこまりました。可能な限り努力致しますが、法律や会社の規則も御座いますし…その点はご容赦ください。」

察して下さいオーラ全開で答えるのが精一杯でした。

「そうですよね…まぁ…出せる範囲内でお願いします…」

お迎え時のハキハキとした印象は何処へやら。すっかり気落ちした様子のマネージャーさん。こちらも一抹の不安を抱えたスタートとなりました。

いざ!Kさんと御対面!

「Kさん、おはようございます。あと5分くらいで着きます」

ご自宅付近からマネージャーさんが携帯で連絡を入れます。

有名人には有りがちな事ですが、Kさんもネットでは『裏ではワガママ』『スタッフには横暴』などと噂が飛び交う人でして。

先程の話しもあり、やっぱり噂は本当なのかな…車内がピリピリしたら嫌だなぁ…などと考えながらご自宅へ到着すると、既に玄関前にはKさんの姿が。

『うわぁ〜Kだ!テレビと一緒だ!』

やっぱり超有名人はオーラが違います!遠目に見てもテンションが上がります!もちろん顔や声には出しませんが。

「おはようございますKです。今日はよろしくお願いします。」

車に乗り込んだKさんは開口一番、マネージャーさんに目を向けるより先に私へ向かって頭を下げて下さるじゃありませんか!なんだKさん良い人やん!

先程までの不安などすっかり吹き飛んだ私は、ウキウキ気分で車を発進させます。

しばらくはマネージャーさんと打ち合わせや談笑されていたKさんですが、早朝の出発だった事もあり、首都高を抜ける頃には後席は静かになり、仮眠をとってらっしゃる様子でした。

事前にマネージャーさんから依頼のあった通り、出せる速度の上限ギリギリをキープして東名高速を走り、休憩予定だったサービスエリアに到着したところで事態は急変するのです。

ここは腕の見せ所

「では20分後くらいの出発で」

そうマネージャーさんに告げられた私は手早く5分程でトイレを済ませ車に戻ると…あれ?マネージャーさんがいる?

「あの…やっぱりもう少しスピード出せませんか?ちょっと不満みたいで…」

う〜ん…そう来ましたか。静かになったのは仮眠ではなく、不満を我慢していたからの様です。

道路交通法を無視する訳にはいきませんが、お客様にご満足頂ける様に運行するのがハイヤー乗務員の務め。何とか頑張ってみましょう。

再出発した私は少しだけ運転の質を変えてみました。通常、ハイヤーの運転は車線変更や加減速の揺れを感じさせない運転が必須ですが、今回は敢えてメリハリを付けて、少しだけ揺れる運転にしたのです。

トップスピードは変えていませんが、後席から速度計は見えませんので、体感が変われば『急いでいる感』は出せる筈です。

この作戦は効果があった様で、しばらくすると後席からヒソヒソ声の会話が漏れ聞こえてきました。

「なぁ…ちょっと速くなったよな?」

「はい…さっきちょっとお願いしまして…」

「え?言ったの?…あ〜あのさ、あんまそう言う事言わなくていいからな?…まぁでも、ありがとな」

うわぁぁ〜!何このイケメン!?聞こえてる!聞こえてますよKさんっ!

運転手を気遣うだけでなく、マネージャーさんを嗜めつつも感謝するとか!何ですかこの気遣いの全方位射撃!

兎にも角にも、Kさんのご機嫌も直った様で、以降は良い雰囲気で目的地のコンサートホールへ到着する事ができました。

国民的アイドルからの誉め殺し

昼前の現地入りから本番終了まで長〜い待機を過ごし、アンコール終了から間もなく出発のご連絡が。

帰路はKさんとマネージャーさんに加え、スタイリストさんが同乗されました。Kさんは仕事が終わったスタッフさんをよく送ってあげているそうです。

どこまでイケメンなんだこの人?

コンサートが無事に終わった開放感からか、Kさんは若干ハイテンションな様子。車内での会話も弾んでいました。

帰路も往路後半と同じく『急いでいる風』の運転で走行していると、ある事に気が付きました。やたらとKさんが褒めてくるのです。

「えっ!?もう◯◯なの?ハイヤーってメチャメチャ速くね?」

「なぁマネージャー、やっぱりプロの運転は違うよな。これからも長距離の移動はハイヤー頼もうよ」

私に直接ではなくマネージャーさんやスタイリストさんに同意を求める感じで、でも私にも聞こえる様に、インターを通過する度に絶賛してくださるKさん。これは往路で無理させてしまった事へのフォローのつもりなのでしょう。聞いていてこちらが申し訳なくなる程のベタ褒めです。

いや、そんなに仰って頂かなくても大丈夫ですから!気にしてませんから!と心の中で叫びながらポーカーフェイスを保つのが大変でした。

やっぱり最後までイケメンでした

そうして日付も変わった頃、ようやくご自宅へ到着です。

マネージャーさんとスタイリストさんがお見送りするのを邪魔しない様、私は少し離れた所から一礼していると、なんとKさんはわざわざこちらへ歩いて来られて、

「今日は一日お疲れ様でした。気を付けて帰ってください」

両手でガッチリと握手して下さったのです!

もぅ…こんなん…

惚れてまうやろーっ!

もう本当に、ワガママとか横暴なんて噂とは正反対の、気遣いの塊とも言える様な素敵な方でした。

あれから数年、今ではアイドルと言うより俳優として認知される様になったKさん。テレビでお見かけする度に、あの気遣い溢れる姿が思い出されます。

素敵な役者さんになって下さい!陰ながら応援してます!

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